Column
【対談】
終活弁護士 伊勢田篤史 対談Vol.1 「社長が突然死んだら?」
一社)良家のご縁の会 代表理事の村田弘子が、「継ぐ」をテーマに事業承継や家督承継に関連する様々なプロフェッショナルと対談する企画記事。 今回は、緊急事業承継ガイドブック「社長が突然死んだら」の著者である伊勢田篤史先生をお迎えし、公認会計士で且つ弁護士であり、『終活弁護士』で著名な伊勢田先生から見た、経営者家族が「社長が突然死んだら」というケースの事業承継の現実について、お話を伺って参ります。
社長が死んだその日の対応について
10年近く相続・終活・事業承継・後継者などの問題で先生にお世話になってきました。イラストや漫画が入っていて楽しく読める事業継承ガイドブックなのですが、書かれている現実には社長は大体「自分は死なない」と思っていると。
そうですね。不死鳥のようですね(笑)
現在バリバリと活躍しているという方でもある時突然、パタッと……なんていうこともありますよね? 実際に突然社長が突然亡くなってしまった時、現実ではどんな事が起こるのでしょうか?
社長が亡くなってしまったその日の対応から、色々考えなければいけないことになりますよね。 社内はもちろん、社外や取引先にどのような方法で社長の訃報を公表すべきかなども問題になると思いますし。社長の行っていた業務をどう引き継ぐべきかや、会社の資金繰りも考えなければいけませんよね。
中小企業などで多いのですが、銀行の入出金管理を社長自らやっているケースでは、社長の死亡後に入出金管理や請求書などのチェックをすべて調べて支払いをする必要もあります。 また社長がインターネットバンキングを使用していた場合は、IDやパスワードが分からないという問題も起こりえます。
確かに、そうですね。
社長が亡くなった場合、会社の顔となる次の代表取締役を誰にすべきかという重要な決定事項もあります。 後は社葬ですよね。事業承継において社葬というのは非常に重要な行事となりますので、そういったところもしっかり考えていかなければと思います。
私も一応経営者の妻ですが、考えてみると仕事で不安なところがあれば全部夫に相談してやってきているんですよね。 なので夫が突然いなくなった場合、息子に相談すべきかどうかも考えてしまいます。また、社員さんには相談できない事柄もありますし。
そもそも社員に社長の訃報をいつどのように発表すればいいのかって考えてしまいます。社長が亡くなった後、24時間以内に決めなければいけないことってたくさんありますよね。
生前共有の重要性
一般のご家庭は「葬儀屋さんをどこにしよう?」などで悩まれるのかなと思うのですが、会社を経営している家族は会社の大問題も入ってきて、さらに頭を悩ませてしまうんですね。 実は、私自身も家族にネットバンキングのIDやパスワードを言っていないんですよ。もし何かあった時に、夫や社員はパスワードを知らないので、パソコンやスマホが開かないという事もありますよね?
それは大問題になりますよね。社長が亡くなった後に「取引先などの連絡先や遺影用の写真を用意したくてもスマホやPCにロックがかかっていて開かない」という話はよく聞きます。
特に小さな会社を経営している社長さんの場合、スマホのLINEやメッセンジャーなどで顧客とやり取りしているケースがあるんですよね。実際にこのようなケースでスマホのロックが解除できないと、ご家族がその後の対応に大変苦労されたという話もあります。
焦りますよね。亡くなった翌日でも取引先からの連絡が来る時もありますし。 また、連絡をくれた取引先の方に「亡くなった」と言うべきかどうかも迷いますよね。
どのタイミングで言っていいのかとか、そういうところを悩まれることもありますね。
怖いですね。冗談交じりに夫が寝ている時に妻が夫のスマホの内容を調べるなんてこともありますけれど、勘の良い方は夫のパスワードや指紋認証とか分かる方っていらっしゃいますよね?
今は顔認証などで簡単にロック解除できないようになっていますけれど、昔は寝ている時に夫の指紋でスマホを開けて、後で見やすいように自分の指紋を夫のスマホに登録しておくという方もいますね。 そうすると「自分以外にも1個違う指紋がある、誰の指紋?」と思ったら妻だった…みたいな。
このようなことは特殊なケースですが、社長のPCやスマホが開かないのでパスワードの解除を業者に依頼するとなっても、費用だけでなく時間もかかってしまうものなんですよね?
ケースバイケースですけれど、スマホのロックを解除するだけでも20〜30万、中には50万かかるケースもありました。それだけの費用をかけてすぐにロック解除できれば良いんですけど、中には解除までに半年から一年かかるケースもあるようですね。
重要な連絡先や遺影用の写真、仕事のやり取り、カレンダーアプリでスケジュールを管理している方など、スマホに必要なことが入っているけれどロックがかかって取り出せないケースは、亡くなった後の事務手続きや会社の取引先との関係にしても非常にネックになってしまうのではないかと思います。
生前にご家族がパスワードを教えて欲しいって言っても、本人が教えてくれないケースもあるかもしれないですね。 もしもの時に妻や家族、社員さんが困らないように社長さんには「デジタル終活」をやっておいて欲しいですね。
社長が亡くなった後にPCやスマホが開かないケースで一番多いのは、パスワードの解除方法が分からないことなんです。もしもの時が起きてもPCやスマホのロックが解除できるように、ログインパスワードを生前共有しておくべきですよね。
しかし、中には「妻に教えるのはちょっと…」と社長が躊躇するケースもありますよね。例えば、会社の顧問税理士や保険会社の方などに事前に共有しておいて「万が一何かあった時にはログインパスワードを共有して欲しい」と依頼するという形で対応されると良いかなと思いますね。
弁護士さんとか会計事務所など、士業の方と生前からそういったお付き合いをしておくと安心ですよね。ご家族が困ることもなく事業が滞りなく進むということですよね。 今日は弁護士で公認会計士でもある伊勢田篤史先生に「社長が突然死んだら?」というテーマで、突然の事業承継で起こる家族の難しさについてお聞きしました。今日はどうも有難うございました。
まとめ
社長の突然死が起きても、家族や後継が混乱しないよう、各種ID・PWは共有しておくべき。家族には伝えづらくとも、弁護士や税理士、保険会社などに依頼しておく方法も。プロフィール
【伊勢田篤史プロフィール】
一般社団法人 緊急事業承継監査協会 代表理事/日本デジタル終活協会 代表理事
関連サイト https://ceosuddendeath.com/
中央大学法科大学院卒業。“紛争解決”から“紛争回避”へ。法律と会計の経験知識とビジネスを生み出す発想力を併せ持つ行動派の弁護士・会計士。相続、デジタル終活対策、事業承継を得意分野とし、著書の出版やテレビへの出演など、メディア活動も積極的に行う。
【村田弘子プロフィール】
一般社団法人 良家のご縁の会 代表理事 / しあわせ相談倶楽部 代表
関連サイト mirai-hiraku.com shiawasesodan.com tsumagyo.com
創業70年の会計事務所の2代目に嫁ぎ、20年間は3人の子育て、受験に東奔西走の日々を過ごす。その間にファイナンシャルプランナーの資格を取得。人生とお金のご相談にかかわるなかで、経営者様からご子息・ご令嬢の縁談を依頼されることが増え、2012年、結婚相談所「しあわせ相談倶楽部」を設立。全国の医院・士業・経営者から好評を得る。
良家のご縁の会の公式YouTubeチャンネルはこちら
良家のご縁の会チャンネル良家のご縁の会では、「継ぐ」に関するあらゆるご相談にお応えしています。
お問い合せはこちらまで、お気軽にご連絡ください。