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【"継ぐ"コラム】

経営者の妻が50代になったら心がけておきたい3か条

この記事は、
FORTUNA GROUP株式会社代表取締役 村田弘子と、終活弁護士 伊勢田篤史氏との
対談を基にした記事になります。

高校受験、大学受験と夢中で育ててきた子どもも、親が50代に入る頃には就職し、社会人となります。子育ての責任から解放され、肩の荷を下ろし始めるのが50代であるとも言えるでしょう。

夫がサラリーマンならば、定年も見えてきて、ここからは退職金と年金とで、贅沢はしなくても悠々自適を愉しもうと趣味のプランを膨らませる方も多いようです。

しかし、経営者の妻の場合は、子育て終了後もそう簡単には悠々自適は手に入りません。50代になると、親の介護や相続などの課題と共に、夫である社長の引退時期や後継者問題といったいわゆる「承継問題」にも直面します。

そこで今回は、50代になってもまだまだ忙しい「経営者の妻」が、50代になったらやっておきたい3か条をまとめました。

経営者妻が考えるべき自らの役割とは

経営者の妻は通常のサラリーマンの妻とは立場が異なり、社長夫人としての社会的な役割が伴います。どのような役割を担うかは会社の規模やご家庭によって異なりますが、サポートの役割を誤解すると、夫婦関係だけでなく会社経営にも影響を及ぼすことになりかねません。

この記事では、あらためて「経営者妻の役割」について、3つにまとめてみることにしました。

1. 社長のビジネスパートナーであると考える

経営者にとって自分の妻は最も身近な存在であり、夢を共有し、その夢の実現に向かって協力していくパートナーでもあります。

経営者の妻がビジネスパートナーとして会社の財務状況や決算状況を理解し、事業承継をする際にも、落ち着いた対応がすぐに取れるのであれば安心でしょう。しかし、実際には経営者の妻すべてが会社の財務状況に明るいわけではありませんし、社長が妻に経営情報を明らかにしていない場合もあります。

中小企業の場合、経営者の妻が経理や総務などの業務に関わっている事はよくあり、経営者の妻が専務取締役のような肩書きを持っている会社も多いです。経営者の妻が期待される役目は会社によりさまざまですが、どのようなケースにおいても、公私とものパートナーを完璧にこなすことは簡単なことではありません。

夫である社長に対して、結婚当初に「妻にどんなサポートを期待するのか」を具体的に伝えてもらうことがうまくいくコツかもしれません。

2. 社員、取引先、地元、ご近所さんへの日頃の心配り

取引先や銀行、社員などは、経営者である夫だけでなく、妻である経営者夫人のあり方によっても会社を評価することが多いといいます。また、地域の方たちも「○○さんの奥さん」として見ていますし、子どもの学校や塾などでの保護者としての言動もしかりです。つまり、経営者の妻は「常に会社の看板を背負っている」のです。自分の行動が、そのまま会社の評判になることも多々あるということなのです。

経営者の妻として従業員にどう接するかも、気持ちよく働いてもらって会社を発展させる気持ちがないと、お互いにいい関係を創ることは難しいでしょう。

3. 次世代の後継者を育てる

健康に留意した食事を整え、気持ちの休まる家を創るのは、経営者の妻に限った役割ではありません。それに加えて創業家では、「次世代の後継者を育てる」ことも経営者の妻の役割のひとつです。

父親や祖父が働く姿や家を継ぐ苦労を見て「自分も大きくなったら父や祖父のような社長になろうと考えた」と話す2代目・3代目社長さんは多いのです。

職住一体でない会社では、孫や子どもを休日に父親や祖父の働く職場に連れていき、実際に仕事をする姿を見せておくことも、経営者の妻に求められる協力と言えるでしょう。

経営者の妻が50代になったら心がけておきたい3か条

子どもが手を離れれば、親の役目としてはひと段落。自分のすることにお金や時間を使おうかと気が緩む時期が、50代です。しかし、親の介護や子供の結婚、夫の突然死の可能性など、50代だからこそのやるべきことも多いのです。

だからこそ、 経営者妻は50代になっても自らの役割について考えねばなりません。ここからは、経営者の妻が50代になったら心がけておきたい3か条を紹介します。

第一条 親がホームに入る前に実家をどうするか専門家に相談する

親を老人ホームに入れる場合、実家が空き家になることもあるでしょう。親が痴ほう症になってしまったり、重篤な病にかかってしまったりすると、売却などの法的行為ができなくなります。施設に入居させるにしても、実家をどうするのか、施設入居費用はどうするのかなど、多くの問題に直面します。

そのため、親が元気な間に家の管理方法について話し合っておく必要があります。

【実家が空き家になる場合に考えておくべきこと】

  • 人に貸す場合は家賃管理・管理人の有無
  • 売却する場合の不動産会社選定
  • 空き家になる場合の管理人

今はコロナで面会もままならないことがありますし、電話で話すといっても、耳が遠くなると肝心なお話がうまく進まないことも考えられます。場合によっては家族信託も踏まえ、この先の相続の問題のめどを立てて万全に安全対策をとっておきましょう。

第二条 夫が突然死んだ場合の緊急事業承継対策をシュミレーションする

中小企業庁の資料「事業匠永・創業政策について(平成31年2月5日)」によると、70歳を超える社長の半数近くが後継者未定だそう。後継者を決めずに経営者である夫が急死してしまうと、後継者がいないまま事業が放り投げられてしまうことになります。

だからこそ、経営者の妻は50歳になったら、親の介護に関わりながら、夫に万一のことがあったときどうするかを考えておく必要があるのです。

夫の生前対策は、もちろん妻が大黒柱を失ったあと、妻であるあなたの身の安全のために必要なことなのです。

生活保障のつくり方

金銭面については夫に面と向かっていいづらいことではありますが、50代になったら、今後のためにも、夫婦共有の話題にしておくのが安心です。

夫の死後も生活していける体制づくりのためには、このような順番で見積もりをだしていきます。

必要な保証額→夫の財産状況把握→不足分の対応

※必要保証額とは
必要保証額=家族の総支出額-家族の総収入額+貯蓄額

夫の財産状況把握のしかた

プラスの要因として、夫の相続財産だけで生活できるかを生前に確認します。相続財産以外のところでのプラス要因は、生命保険金や死亡退職金、役員報酬などになります。また、経営者の場合、マイナス要因も必ずチェックします。

【財産状況のマイナス要因とは】
  • 相続税は支払えるのか
  • 連帯保証人になっていないか

相続放棄は、場合によっては放棄不可能な場合もあります。夫が亡くなってから困らないように、どんな時に相続放棄が認められなくなるか、調べておきましょう。

経営者の妻が50歳になったら知っておきたい夫の突然死当日の流れ

人間は、いつどんな理由で亡くなってしまうかわかりません。経営者である夫が急死してしまった場合、対応は主に妻が行うことになるでしょう。その時妻が社内のことを何もわかっていないと、その後の対応が後手後手になり、各関係先に迷惑をかける可能性が高くなります。

経営者は社会に対して責任がありますが、その配偶者も同様に、家族の部分を100%プライベートとして扱えない責任があるのです。会社という公器を預かる責任者の妻として、夫の突然死後の当日にやらなければいけない作業を理解しておくようにしましょう。

また、少なくとも社葬(合同葬)の時に招く親族、友人リストだけは、Excelで管理し、いざというときに社内に投げられるように準備しておくと安心です。

社長が3月31日深夜に突然死した場合

時刻 社内
4月1日7時55分 妻から会社に夫の死を連絡
文例)「夫が昨夜亡くなりまして、病院におります。」
日常業務の引継ぎ
4月1日9時5分 会計事務所に電話
文例)「夫が亡くなりまして、今後の会社経営方針等について相談させていただきたいのですが」
会社の資金繰りの引継ぎ
突然死による会社の資金繰りの影響確認
保険金請求の注意点の確認
4月1日13時 葬儀に招く方のリストを準備 代表取締役の選任
4月1日16時 保険金請求の相談
4月1日17時 社葬の相談

第三条 子どものためにふさわしい結婚相手を探す

子育てが子どもの独立で終わったと油断してしまうのが、50代の親の常です。しかし、子どもにとって実は人生最大の関門は、結婚なのです。

親が子どもに代わって結婚相手を探すのは…と躊躇される方もいらっしゃるでしょう。しかし、結婚のことに入り込むのはタブーということではありません。親が子どもの幸せのために何かしたいと思われるのは当たり前のことです。愛情を持って育ててこられ、お子様のすべてを知っている親御様だからこそ、本当にふさわしいお相手を見つけることができるのだと思います。

独身のままでいるか、結婚して家庭を持つかによって、親の精神的・経済的な負担も変わってきます。子どもと話をして、今こういう人と付き合っているという情報も、親子でシェアできたらベストですね。

経営者の妻は50代になってからも気が抜けない

いかがでしたでしょうか。

今まで経験したことのない大きなイベントが親の相続や夫の事業承継を通して、次々やって来るのだということをあらためて痛感された方も多いのではないでしょうか。

家庭で夫を支えるのはもちろんですが、同時に夫の健康への配慮も大切です。

できるだけ信頼してやりとりできる士業専門家とつながりを持っておくことは、いざとなった時に大いに安心材料になります。士業選びの判断基準については、下記のブログをご覧ください。

プロフィール

【村田弘子プロフィール】

FORTUNA GROUP株式会社 代表取締役 良家のご縁の会/しあわせ相談倶楽部/経営者妻スクール 代表

関連サイト
良家のご縁の会 https://mirai-hiraku.com
しあわせ相談倶楽部 https://shiawasesodan.com/
FORTUNA GROUP株式会社 https://fortuna-group.co.jp/

創業70年の会計事務所の2代目に嫁ぎ、20年間は3人の子育て、受験に東奔西走の日々を過ごす。その間にファイナンシャルプランナーの資格を取得。人生とお金のご相談にかかわるなかで、経営者様からご子息・ご令嬢の縁談を依頼されることが増え、2012年、結婚相談所「しあわせ相談倶楽部」を設立。全国の医院・士業・経営者から好評を得る。

【伊勢田篤史プロフィール】

となりの法律事務所パートナー / 日本デジタル終活協会所属

関連サイト
tonarino.jp

中央大学法科大学院卒業。“紛争解決”から“紛争回避”へ。法律と会計の経験知識とビジネスを生み出す発想力を併せ持つ行動派の弁護士・会計士。相続、デジタル終活対策、事業承継を得意分野とし、著書の出版やテレビへの出演など、メディア活動も積極的に行う。

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