事業承継を結婚で解決する ~ファミリービジネスの永続的発展を実現する、次世代へのバトンパス戦略~

企業の在り方が多様化する現代において、日本の経済と文化を静かに、しかし力強く支え続けている存在、それが「ファミリービジネス(同族経営)」です。多くのファミリービジネスが目指す究極の目標は、短期的な利益の最大化ではなく、世代を超えて事業と理念を受け継いでいく「永続的発展」にあります。しかし、少子高齢化と価値観の多様化が進む中、その根幹を揺るがす深刻な課題が「後継者問題」です。

M&Aや外部からの経営者招聘も一つの選択肢として認知されるようになりましたが、創業家が築き上げてきた独自の文化や理念、そして地域社会との絆までをも受け継ぐ最善の策は、やはり「親族内承継」であると信じる経営者は少なくありません。

しかし、その親族内承継を実現する上で、これまであまり公に語られてこなかった、しかし極めて重要な要素があります。それが、後継者の「結婚」です。

本稿は、BtoBビジネスメディアプラットフォーム「イノベーションズアイ」様に掲載された、FORTUNA GROUP株式会社および当機構の代表理事・村田弘子のインタビュー記事を基に、なぜ今「事業承継」に「結婚」という視点が不可欠なのか、そして、私たち「一般社団法人 事業承継結婚推進機構」がその課題にどう向き合い、どのような未来を創造しようとしているのかを、より深く掘り下げて解説するものです。

1.なぜ今、「事業承継」と「結婚」なのか? ~見過ごされてきた経営課題~

1-1. ファミリービジネスの本質的価値と「永続」への願い

ファミリービジネスは、単なる利益追求組織ではありません。地域に根差し、雇用を創出し、時には何世代にもわたって取引先や顧客との信頼関係を築き上げる、社会の基盤となる存在です。その経営の根底には、創業者が掲げた理念や哲学が脈々と流れており、それは企業の「魂」とも言うべき無形の資産です。

「事業を永続させること」。これは、ファミリービジネスを営む創業家にとって、最も純粋かつ強力な願いです。その願いを叶えるためには、経営のバトンを次世代に渡す「事業承継」が不可欠となります。しかし、そのバトンは「経営権」や「株式」といった目に見えるものだけではありません。創業の精神、経営理念、そして家族としての誇りといった「目に見えないもの」を、いかにして継承していくか。ここに、ファミリービジネスの事業承継の真の難しさと醍醐味があります。

1-2. 事業承継と結婚が「コインの表裏」である理由

私たちは、「事業承継と後継者の結婚はコインの表裏である」と提唱しています。なぜなら、事業承継によって後継者が経営のバトンを受け取ったとしても、その方が結婚し、家庭を築き、さらにその次の世代を育てなければ、創業家の血脈による親族内承継は、その一代で途絶えてしまうからです。次世代の後継者候補が、親族の中にいなくなってしまうのです。

これは、M&Aによる事業売却や、外部から経営者を招聘するケースとは本質的に異なります。親族内承継の最大の強みは、創業家の理念やビジョンが深く浸透した人物が経営を担うことによる、組織の一体感と意思決定の速さにあります。長年勤める従業員や、古くからの取引先も、創業家の人間が後を継ぐことに安心感を覚え、より強固な信頼関係を維持・発展させることができます。

後継者が信頼できるパートナーと結婚し、盤石な家庭を築くことは、公私にわたる最高の相談相手を得ることであり、経営者としての精神的な安定にも繋がります。そして、その結婚をご披露することは、社内外に対して「この会社は、次の世代、さらにその先も見据えて安定的に発展していく」という何より力強いメッセージとなるのです。

1-3. 経営者の「最後の悩み」― 現場から生まれた切実なニーズ

当機構の代表理事である村田弘子は、70年の歴史を持つ会計事務所の2代目妻として、ファイナンシャルプランナーの立場から多くの経営者様のご相談に関わってきました。決算書や事業計画について真剣な議論を交わしたあと、ふと、経営者様が一個人としての顔に戻り、こう漏らすのです。

「先生、実は息子のことで相談が…」「娘に、誰かいい人はいないだろうか」

事業を盤石なものにし、次世代への道筋も見えてきた。しかし、最後のピースが埋まらない。それが、後継者であるお子様の結婚問題でした。この「経営者の最後の悩み」がいかに多く、そして深刻であるかを肌で感じたことが、2012年に結婚相談所「しあわせ相談倶楽部」を設立し、そしてこの「事業承継結婚推進機構」を立ち上げる直接のきっかけとなりました。これは一部の特殊な悩みではなく、日本のファミリービジネスが抱える、普遍的かつ根源的な課題なのです。

2.現代ファミリービジネスが直面する、三つの「すれ違い」

2-1. 親と子のすれ違い:「継いでほしい」と言えない親心

現代の経営者の多くは、「事業を継ぐかどうかは、子供の自由な意思に任せたい」と考えています。それは、お子様の人生を尊重する深い愛情の表れです。しかし、その心の奥底には、「できることなら、この事業を継いでほしい」という経営者としての切実な願いが隠されています。

この本心を言えないまま「継がなくていい」と伝えてしまうと、お子様の側もまた、複雑な心境に陥ります。「本当に継がなくていいのだろうか」「親の本心はどこにあるのだろうか」と、かえって気を揉むことになりかねません。実際に、親の心中を察し、「私に継がせてほしい。その上で、共に事業の発展を考えてくれるパートナーを紹介してほしい」と、自ら直訴してきた女性後継者もいらっしゃいました。

このような親子のコミュニケーション不全は、貴重な事業承継の機会を失わせるだけでなく、家族関係にさえ微妙な影を落とす可能性があります。いずれ訪れるその時のために、早期から親子で率直に話し合う場を持つことが、何よりも重要です。

2-2. 時代の変化と後継者の多様化:女性後継者の台頭

この10年で、事業承継のあり方は劇的に変化しました。最も象徴的なのが、女性後継者の増加です。かつては「婿養子に来てもらい、事業を任せたい」というご相談が9割を占めていましたが、現在では「娘が事業を継ぐ」というケースとの比率は、ほぼ5対5に近づいています。

これは、女性の社会進出や高学歴化に加え、「結婚相手の男性に、家を背負うという過度な心理的負担をかけたくない」という、女性後継者ご自身の思いやりも反映されています。この変化に伴い、私たちへのご相談も、以下の3つのパターンに明確に分かれてきました。

  1. 息子が継ぐので、家庭を支え、共に創業家の一員となってくれる結婚相手を探してほしい。
  2. 娘自身が社長として事業を継ぐので、そのビジョンを理解し、ビジネスパートナーとして共に歩んでくれる男性を探してほしい。
  3. 娘の結婚相手(婿)に代表を継がせることを決めているので、経営者としての資質と覚悟を持つ男性を探してほしい。

それぞれのケースで、求められるパートナーの資質や役割は全く異なります。だからこそ、表面的な条件のマッチングではなく、事業内容や創業家の理念、そしてご家族一人ひとりの想いまでを深く理解した、専門的なサポートが不可欠となるのです。

2-3. 世代間のすれ違いと祖父母の役割:「帝王学」の継承

核家族化が進んだ現代において、意外なほど重要な役割を果たしているのが「祖父母」の存在です。親が子に「事業を継げ」と正面から言うことには抵抗があっても、祖父母は孫に対して、より自然な形で家業の価値を伝えることができます。

親族内承継に成功している企業の多くで、後継者が「おじいちゃん、おばあちゃんの影響が大きかった」と語ります。祖父母は、愛情たっぷりに孫と接する時間の中で、創業時の苦労話や、仕事のやりがい、お客様からの感謝の声などを、物語として聞かせます。それは、後継者問題という堅苦しい話ではなく、いわば創業家の「生きた帝王学」です。

この祖父母による「あなたが後継ぎなのだよ」という愛情のこもった刷り込みと、家業の価値の伝承が、お子様の心に「事業を継ぐことへの誇り」と「責任感」を、ごく自然に芽生えさせるのです。

3.私たちの使命と役割 ~事業承継結婚推進機構ができること~

3-1. 私たちは「ただの結婚相談所」ではない

当機構、そして母体である「しあわせ相談倶楽部」が、他の結婚相談所と一線を画す最大の理由は、70年にわたり事業承継をサポートしてきた会計事務所の視点を持ち合わせていることです。私たちは、財務諸表から企業の経営状態を読み解くと同時に、目に見えない「家族のバランスシート」とも言うべき、家族間の力学や想いを理解することに重きを置いています。

ファミリービジネスの成功には、「ビジネス(事業)」「オーナーシップ(所有)」「ファミリー(家族)」という3つの要素(3サークルモデル)の調和が不可欠です。私たちは、この3つの縁すべてを繋ぎ、最適なバランスへと導くことができる、数少ない支援機関であると自負しています。ただ結婚相手を探すだけでなく、創業家の未来を見据えた事業継続のためのご提案まで行えること。それが私たちの提供する独自の価値です。

3-2. 「事業承継結婚アドバイザー」という専門家

「しあわせ相談倶楽部」の活動を通じて、後継者の結婚問題という課題が、特定の地域や業種に限らず、全国的に極めて高いニーズがあることを確信し、2024年に当「一般社団法人 事業承継結婚推進機構」を設立いたしました。

当機構の核心は、ファミリービジネスの包括的支援を行う専門家「事業承継結婚アドバイザー」の養成と認定にあります。アドバイザーは、仲人としてのスキルはもちろん、ファミリービジネス論、事業承継の基礎知識、そして高度なカウンセリングスキルを体系的に学びます。

彼らが担うのは、単なる男女のマッチングではありません。ご本人同士の相性はもちろんのこと、そのご家族、会社の従業員、そして取引先に至るまで、すべての関係者が心から祝福できる「良縁」を結ぶという、非常に重い責任を担います。創業家の理念に最大限の敬意を払い、覚悟を持ってその大任にあたることで、私たちは年間20~30組という、質の高い成婚を安定的に生み出しています。

3-3. ワンストップ・プラットフォームの構築

結婚というごく個人的な事柄は、事業承継という法務や税務が複雑に絡み合う問題と密接に連携しています。だからこそ、私たちは各分野の専門家との協力体制を何よりも重視しています。

会計士、弁護士、税理士、司法書士、中小企業診断士といった士業の先生方や、M&Aのコンサルタントと緊密な情報交換を行い、必要に応じて最適な専門家にお繋ぎする。これにより、ご相談者様は、結婚の悩みから事業承継の具体的な手続きまで、あらゆる課題をワンストップで解決できるプラットフォームを構築しています。

4.未来へ向けて ~「強くてしなやかなファミリー」を創るために~

4-1. 日本のファミリービジネスが直面する「最後のチャンス」

今、世界の投資家や研究者たちが、日本のファミリービジネスが持つ「永続性」や「レジリエンス(強靭さ)」に熱い視線を送っています。しかし皮肉なことに、その本家である日本のファミリービジネス自身が、少子化の波の中で、その力の源泉である「親族内承継」を失いつつあるのです。この現状を、私たちは座して見過ごすことはできません。

創業家は今、家業の基盤となる「強くてしなやかなファミリー」の持続可能性に、真剣に向き合うべき最後のチャンスに直面していると言えるでしょう。ここで言う「強くてしなやかなファミリー」とは、確固たる理念という軸を持ちながらも、時代の変化に柔軟に対応できる家族のあり方を指します。

4-2. 究極の解決策は「家庭内教育」にあり

この危機を乗り越えるための究極の解決策は、外部の力に頼ることではなく、創業家自身が後継者を育てる「家庭内教育」にあると、私たちは結論づけています。

現在、当機構では、ファミリービジネスの永続的発展という目標から逆算し、創業家が次世代にどのような家庭内教育を施すべきかを体系化した、独自のプログラムを構築しています。これには、次世代経営者としての帝王学やリーダーシップ論だけでなく、良好な関係を築くためのパートナーシップ論、そして創業家の理念を次代に伝えるための子育て論までが含まれます。

私たちの目標は、一組の結婚を成立させることだけに留まりません。創業家自身が、優秀な後継者を育て、その方にふさわしい伴侶との幸福な結婚を実現し、そしてまた次の世代を創生していくという、持続可能で自律的な「好循環」を生み出すための文化と仕組みを創り上げること。それこそが私たちの最終的なゴールです。

「そのお手伝いをするだけだ」

これは、私たちの事業の本質を表す、代表・村田の言葉です。

結び:あなたの会社の物語を、100年先へ

事業承継は、一企業の存続をかけた、極めて重要な経営プロジェクトです。しかし同時に、それは家族の歴史と未来を紡ぐ、愛と絆の壮大な物語でもあります。その物語が、輝かしい未来へと繋がっていくよう、私たち「一般社団法人 事業承継結婚推進機構」は、ファミリービジネスの最も根幹にある「人」と「家族」にどこまでも寄り添い、その永続的発展を誠心誠意サポートしてまいります。

事業と家族の未来について、少しでもお悩みやご関心事がございましたら、どうぞお気軽に当機構までご相談ください。

一般社団法人 事業承継結婚推進機構

まずは、お話をお聞かせください

どんな些細なことでも構いません。あなたの会社の未来、
ご自身の未来について、専門家が親身に寄り添います。
ご相談内容は固く秘密を厳守いたします。

経営者・ご家族様

個別相談のお申し込みはこちら

パートナー候補の方

個別相談のお申し込みはこちら

講座・取材・その他のお問い合わせ

アドバイザー講座や講演依頼など